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関西支店 米原市統合庁舎整備事業作業所

米原市の未来を拓く 新たな統合庁舎を築く米原市の未来を拓く 新たな統合庁舎を築く

滋賀県米原市の統合庁舎を整備するプロジェクトが進行中だ。利便性が高く、機能美にあふれた施設は、行政や市民交流の拠点として、また米原駅東口エリア活性化の起爆剤として、地域の大きな期待を集めている。確かなチームワークと熱い思いで工事に邁進する作業所を訪ねた。

Photographs by Seiya Kawamoto

米原駅周辺に新たな人の流れやにぎわいを生む市民に開かれた統合庁舎

 京阪神・中京・北陸の結節点であり、滋賀県内唯一の新幹線停車駅でもあるJR米原駅。同駅の東口エリアで、米原市の新たな統合庁舎の建設工事が進められている。米原市は、2005年に4つの町が合併して誕生した自治体。これまで旧4町の庁舎を活用しながら行政運営を行っていたが、機能の分散や建物の老朽化などが課題となっていた。そこで、行政機能を集約し、業務効率や耐震性などの向上・強化を図るべく、統合庁舎の新設を決定。2018年7月に行われた設計・施工一括のデザイン・ビルト方式の競争入札により選ばれたのが、当社JVだ。

 「当社の設計・施工部門が密に連携して迅速な意思決定、確実な品質管理を行うことをお約束しました。また地元企業や県産材の活用、地域の児童・生徒・学生さんの現場見学会の開催など、建設段階から新しい庁舎に愛着を持っていただけるよう、地域貢献への注力をご提示しました。技術面に加え、こうした体制や取り組みも高く評価いただいて受注に至りました」と眞栁洋平作業所長は振り返る。

 庁舎はS造5階建てで、立体駐車場も整備する。行政サービス窓口やオフィス、議場を擁する執務エリア、さらに1〜3階に市民のための交流エリアを備える点が特徴だ。「交流エリアには、コンベンションホールや市民活動スペース、琵琶湖や滋賀県最高峰の伊吹山、新幹線が走る様子を眺められる屋上広場を設けます。JR米原駅東口エリアの中核拠点となる複合施設でもあり、市民の皆さんの注目度や期待は大きい。その思いに応える高品質な建物を安全に施工することが私たちの使命です」。他県でも市庁舎建設の陣頭指揮を執った経験を持つ槇岡進作業所長は、地元の期待を受け止め、そう力を込める。

完成パース
(1は南東側外観、2がコンベンションホール、3が屋上広場)。
BCPやユニバーサルデザインに配慮された設計で、安心と使いやすさを両立している
施設断面図。交流エリアや市民利用の多い窓口は3階までに集約している

施工現場。奥にはJR米原駅と線路が見える。RC庇の製造・ストックのヤードには立体駐車場の敷地を活かした

RC庇のPCa部材を
現場で迅速・高品質に製造

RC庇のオールサイトプレキャスト工法
[1]施工現場。奥にはJR米原駅と線路が見える。RC庇の製造・ストックのヤードには立体駐車場の敷地を活かした
[2]設置されるRC庇。1ピースは約3t
[3]製造ヤードに組まれた配筋型枠
[4]ストックされたRC庇のピース
[5]精度高く仕上がったRC庇。通常の現場打ちだと型枠を外す手間がかかり、支保工足場も長期にわたり外せないが、PCa化したことで、作業効率や高所作業における安全性は格段に向上した

  工事は2019年9月にスタート。庁舎の施工で鍵となったのが、RC庇のオールサイトプレキャスト(PCa)工法だ。各階にあるRC庇は、日射制御の役割を果たすとともに、琵琶湖の湖面と連なる水平ラインを強調する外観のキーデザインでもある。それをPCa部材として全て現場(オールサイト)で製造することに挑戦したのだ。「本建物に据え付ける庇はボリュームも多く、全体工程を左右する最もクリティカルな部分です。庇をPCa化すれば作業の効率と安全性は格段に向上し、しかも現場製造なら、工場からの運搬コスト・時間も大幅に削減できます。当初の予定になかったものの、着工前に設計本部構造設計部と検討した結果、本建物の躯体形状ならPCa部材も納まりよく取り付けられると分かり、導入しました」と眞栁所長は説明する。

  ヤードは、庁舎に遅れて着手する立体駐車場の敷地を活用。2020年2月から、鉄骨を建てる傍らで、PCaコンクリートの型枠配筋組み立て作業を進めていった。建築本部技術部の支援も得ながら、何より品質確保に最大限力を尽くした。担当した入社5年目の奥野健太郎工事係はこう語る。「庇部材1ピースは、長いもので出幅3m×横幅1.5m。現場でいかに品質良く迅速に製造するか、最初に型枠モックアップをつくって入念に検証しました。配筋部分の留め枠に使う素材一つにしても何種類も試し、職人さんと相談しながら最適な部材を探し、施工性を追求しました。私にとって初めて経験する業務でしたが、努力の甲斐あって納得のいく製造品質が得られました」。

 つくった庇部材は170ピース。微妙に形状が異なるピースもあるため、設置箇所との照合には二重三重のチェックを行って万全を期し、揚重機や部材ストック場所についても綿密な動線・配置レイアウトを練り上げた。そして6月末、想定通り、全部材をスムーズに取り付け終えることができた。

1~2階吹き抜けのコンベンションホール。木の天井ルーバーとガラス越しのT-WOOD® BRACEが空間にぬくもりを与える

日本の公共施設に初適用した魅せる耐震構法「T-WOOD® BRACE」

 現在、工事は外装・内装に取り掛かっている。仕上げ段階の1階エントランスに入って目を引くのが、米原市産の杉材を使った天井ルーバー、そしてガラス壁を彩る木格子状の「T-WOOD BRACE」だ。

「ブレースは建物の耐震性能を確保する上で重要ですが、通常の鉄骨ブレースは見た目が武骨で、空間に馴染まないと思う方もいらっしゃいます。その点、当社の独自構法であるT-WOOD BRACEは木と鋼板のハイブリッドで、従来の耐震部材と同等の性能を持ちながら、木の温かみも感じられるデザイン性も兼ね備えています。当社から“魅せる耐震構法“として提案し、採用が決まったものです」と眞栁所長は語る。

 T-WOOD BRACEの公共施設への適用は本邦初。しかも本建物に設置するブレースはフレーム枠が横幅7.4m×高さ3.2mと極めて大きい。担当した幹田晃司工事課長は「前例のない試みだけに、施工には慎重を期しました。T-WOOD BRACEはすでに仕上げた建物の柱や梁とボルトで接合するため、フレームに少し歪みがあるだけでも、うまく納まらなくなります。工場でつくった鋼板ブレースに木の集成材を取り付けていくのですが、その一つひとつの接続面をずれなく精緻に仕上げ、全体に歪みを生じさせないことが最大のポイントです。そのため、1/2スケールのモックアップをつくった技術センターと共に緻密な検証を重ね、鋼板ブレースと木の隙間を極力なくし、溶接による全体の歪みを抑える方法を考案して、丁寧に施工しました。結果、精度高く、美しく完成することができました。建築における木材利用は低炭素社会を目指す時代の要請でもあり、ここで得た知見は今後必ず活かせると思います」と胸を張る。

緻密な計算と匠の技で隙間を極力なくし美しく接合された

緻密な施工で、機能美あふれるT-WOOD® BRACEを設置!

 木と鋼板のハイブリッド耐震構法である「T-WOOD BRACE」。米原市統合庁舎では、斜め格子状に溶接した鋼板ブレースを両面から木の集成材ブロックで挟み込んで締め付けるスタイルを採用している。鋼板にはビード(溶接跡)やうねりがあるため、木とは完全には密着しないが、その隙間を最小限にする調整が必要だ。木の集成材ブロックは個別に取り付けるが、全体はつながっているため、一カ所調整したことで、別の箇所が狂うこともある。そこでいったん全体をラフに仮留めし、腕のいい造作大工たちがくまなく調整して、一気に締めて完成させる作戦を取った。これが奏功して、木と鋼板が突き合う隅角部の隙間(平均)わずか3.5mm以下のクオリティを実現できた。

搬入される鋼板ブレース
施工中の様子。木部分が鋼板ブレースの圧縮強度を高める座屈補剛材の役割を果たし、従来の耐震部材と同等の構造性能を発揮する
緻密な計算と匠の技で隙間を極力なくし美しく接合された

地元の子どもたちに親しみを持ってもらう活動を積極的に展開中

 近隣の小学生を招いての現場見学会(写真1・2)と仮囲いに掲示された地元の保育園園児たちの絵画作品(写真3)。施主である市役所の皆さんや地域住民からも好評だ。

安全施工のラストスパート! 確かなチームワークでゴールへ

 工事はすでに8割方完成し、最終盤を迎えている。線路が近接しているため、列車や新幹線の運行に些かの支障も来さぬよう「紙一枚飛ばさず、煙一筋立てない」ことを徹底し、全員が常に緊張感を持って、安全施工を貫いてきた。こうした一同の努力、現場の強い結束力は槇岡、眞栁両所長の自慢だ。実際、現場を歩くと、すれ違った若手社員、作業員たちから明るいあいさつが飛び、きびきびした動きが印象に残る。「当作業所は中堅層が薄いのですが、その分、ベテラン職長たちのフォローが心強い」と幹田工事課長も言葉を添える。先日行った小学生の現場見学会では、ペンキ塗りや高所作業車のデモンストレーションなどで、職長会のメンバーが率先して活躍してくれたという。

 眞栁所長のモットーは「思いやりのある現場」・「後悔しない品質管理・安全管理」。現場ではシビアな決断を迫られることも多いが、発注者や職人の立場になって物事を考え、決して悔いを残す選択はしてはならない、との思いで掲げる言葉だ。そして自分の家を建てるように丹念に築き上げ、共に働く全ての人を家族のように思って安全や健康に気を配る−その精神は現場の隅々まで浸透している。

 統合庁舎の完成は、雪解けを迎える2021年3月。所長たちは、「この士気を最後まで維持し、訪れる全ての方に喜ばれ、愛される建物を完成させます」そう笑顔を見せた。

(2020年10月28日取材)

Message from Client

米原市のさらなる発展に向けた、行政と市民交流、駅前活性化の新拠点

米原市政策推進部政策推進課 統合庁舎整備推進室 馬場主幹

 統合庁舎建設は、米原市の未来を拓く一大プロジェクトです。長らく分かれて行ってきた行政サービスの一元化に加え、米原駅前に新設することで、駅周辺の活性化の起爆剤になることを期待して計画されました。市民の皆さんが集い、憩い、学べる「まいばら駅前ぷらっとホーム」という名の交流エリアも設けます。これまで着実に施工を進めてきた大成建設さんの技術や知見、現場の皆さんの真摯な働きぶりには大きな信頼を寄せています。水に恵まれ、豊かな自然を誇る米原は、厳しい豪雪でも有名です。この冬を無事に乗り切り、最後まで安全第一を貫いて春の竣工を迎えましょう。

工事概要

事業名称 米原市統合庁舎整備事業
発注者

米原市長平尾道雄

基本設計 山下設計
実施設計 当社
監理者 当社
施工者 当社・桑原組JV
工期 2019年9月1日〜2021年3月1日
敷地面積 9,367.03m2
建築面積 4,519.73m2
延床面積 12,714.02m2
階数 地上5階
構造 S造
所在地 滋賀県米原市